より自分らしく健やかに。完全マイペースでヨガを学んでみませんか?

ヨガはやさしいポーズほど難しい!

一般的に初心者向きとされているものから、柔軟性や筋力が必要となる上級者向けとされるものまで、ヨガには数え切れないほど、様々なポーズ(アーサナ)が存在します。
そのなかで、「最も難しいとされるアーサナとは?」と質問されたら?

一般的なイメージでは、こんなふうなポーズが難しいとされているのかもしれません。
こちらはピンチャ・マユラーサナ(孔雀の羽のポーズ)と呼ばれています。
確かにこのアーサナを効果的に行うには、体幹の強さに加え、肩を引き上げる力、肘で床を押す力をバランス良く使っていく感覚などが必要。
それにはやはり、ある程度ヨガの練習を積み、身体を整えた状態でないと難しいかと思います。

けれども、このポーズより、はるかに難しいポーズがあると私は感じています。
それは、ターダーサナ。
山のポーズとも言われ、見かけ上は、ただ真っ直ぐに立っているだけに見えるポーズです。

下のポーズです。
体育の時間でやったような、「気を付け」のようなですが。
立位のアーサナのなかでは基本中の基本とも言えるポーズです。
このアーサナを「ちゃんと」行うには、実にたくさんのポイントがあります。

  • 踵の真ん中にしっかり重心がかかっているか?
  • 踵の内側、外側、均等に地面を踏み締めているか?
  • 踵、膝裏から足の付け根まで足全体が伸びているか?
  • 坐骨と恥骨を中心に寄せて、身体の前後を同等に意識できているか?
  • 骨盤底から頭頂まで体の縦のラインが真っ直ぐに伸びているか?
  • 肩甲骨が背骨の中心に引き寄っているか?
  • 肩甲骨から肺を持ち上げるように胸全体が広がっているか?
  • 首や肩に余分な緊張がないか?

ざっと書き出しただけでも、これだけのポイントがあります。
(さすがにここまでいくと相当マニアックですが…)

ただ、こうしたことを全て確認しながら行うのが、このポーズの理想であり、目標となります。
「ただ立つ」だけなので、誰にでも出来そうですが、実際にちゃんとやろうとすると、かなり難しいということが、ご理解いただけるかと思います。

私も過去数え切れないほど、このポーズを練習していますが、やっぱり非常に難しいと感じます。

ヨガというのは、「自分自身の内側に意識を向けるもの」ということを、この場で再三お伝えしていますが、このように、ただ真っ直ぐ立っている状態、つまり、身体に動きが無いなかで、自分の身体の隅々まで意識を向けて観察するということは、実際のところ、至難の業と言えます。

この視点からすると、
さらに難しいと言えるのが…
シャヴァーサナ。
屍のポーズとも呼ばれます。

完全にリラックスするポーズで、上手にできると、数分このポーズを取ると、数時間分の睡眠に匹敵するほど疲れが取れるとも言われているようです。

この場合も、身体を動かしてはいませんが、
意識は常に身体全体に向けていきます。

全身を床に預けてリラックスしながらも、身体の隅々まで、意識を向けていくこと。
これがまた、非常に難しいのです。

座禅を経験された方は分かりやすいと思いますが、ただ座っているだけだと、眠くなったり、いろいろな考え事が湧いてきたりしてしまいますよね。
このアーサナは横になっている状態なので、尚更、意識はあちこちに向かいます。
疲れていると、当然、眠くなります。
でも、眠ってしまっては、このポーズを練習したことにはなりません。

全身の余分な力を抜いた状態でいながら、決して眠らずに、呼吸と身体の感覚、自分の内側をただただ見つめていきます。

例えば、床に置いている背骨がゆっくり伸びていく感じ。
呼吸が流れて、全体に広がっていく感じ。
時間の経過とともに、身体のいろいろな部分の感覚が少しずつ変化していく感じ。
身体のある部分の力が抜けていったり、また新たな緊張に気付いたり。

ヨーガでは、「身体が動くかどうか」ということより、ポーズを取っている過程、自分の内面を観察すること。
それこそが、ヨガ。
なのでこのアーサナこそ、まさにヨガ、と言えると思います。

ヨガのポーズを外側から見える形にだけ囚われていると、このポーズの持つ意味が見えづらくなります。
リラックスのポーズといっても、家でゴロゴロしている状態とは違います。

眠気や散り散りに入り乱れる雑念のなかで、自分の内側に集中するというのは、言わば、心を強くするトレーニングなのです。
ヨガに心理的な効果があるのも、ごく自然なことなのです。


冒頭でもお伝えしたように、ヨガには数え切れないほどのポーズがあります。
そのため、出来るだけ多くのポーズを練習することが、ヨガを上達させる方法だ考えている方もいらっしゃいます。

けれどもヨガでは、どんなにキツイポーズを練習していても、
呼吸の様子はどうか?
今の身体はどんな感じがするか?
骨、筋肉、皮膚など身体全体のつながりはどうか?
こういうことに、常に意識を向けていられることが大切。

ヨガには一見アクロバティックなポーズもありますが、その目的は、自分の身体をさまざまな角度から観察するためです。
日常生活では絶対にやらないであろう身体の使い方をしていても、平常心を保ったまま、自分の呼吸を観察できるか?
というチャレンジのために、いわゆる上級者向けと言われるポーズが存在しているんです。

ですので、特に初心者の方は、たくさんのポーズを練習しようとするよりも、今のご自分の身体の状態に合ったポーズを、まずは数種類から、丁寧に練習してみることをお勧めします。

kazenone

kazenone

ヨガインストラクター・臨床心理士。 不器用な自分を認めて、ただシンプルに生きるのが信条。 ヨガの学びを通して、身体と心のつながりを実感する毎日。

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