「ヨガ=リラックス」
「ヨガは気持ちよくやればいいんでしょ?」
(ある意味、”適当にやればいい”というふうに言っているように、私には聞こえるのですが…)
そんなお声をしばしば耳にします。
または、Youtubeのヨガ動画などで、「気持ちよく動かせる範囲で動かしましょう」というインストラクションも一般的に用いられます。
ただ、これら全て、誤解と言えば誤解だと私は思います。
ヨガにとって「気持ちいい」ことは、もちろん大切です。
誰にでも休息が必要な時もありますし、心身の調子を整えるため、まず身体を緩めることを目的としたポーズもあります。
けれども、本来のヨガの目的というのは、肉体的な身体の状態を整えることを通して、心の状態を整えていくということが挙げられるのです。
自分にとって、他ならぬ自分自身でありながら、最も厄介でままならないもの、それが「自分の心」です。
そんな「心」を整え、穏やかな状態に導くためにこそ、私たちが今学んでいるポーズを行うヨガがあるのです。
ヨガはゴロ寝じゃありません!
とりわけ、リラックスのためのヨガクラスでは、「単に気持ちいい」だけでやっていることが多くあります。
ただ、一歩間違えると、家でゴロゴロしながらお昼寝しているのと同じことになってしまいます。
ヨガで最も大切なのは、「自分の内面を観察し続ける」ということ。
リラックスのためのポーズでは、このことをより一層強く意識してやっていかないと、せっかくヨガを練習しているのに、実際にやっていることがヨガではなくなってしまいます。
ヨガは自分を変えるためのチャレンジ
ヨガの目的は十人十色だと思いますが、私はヨガというものは、「自分の現状を変えよう」というチャレンジだと思うのです。
だって、「より健康になりたい」「より美しくなりたい」というのは、「今の自分を変えたい」ということですよね。
そんな「自分を変えたい」という気持ちでヨガに向き合うのであれば、単にリラックスする以上に、自分の肉体をしっかりと使っていくことが大切なのです。
ヨガで身体を整えるということは、今までとは違った身体の使い方、自分の身体と心との向き合い方を学んでいくということです。
もちろん、必要以上に身体を酷使することは厳禁です。
苦行のように自分を追い込むのではなく、リラックスだけを追い求めるのでもなく、自分の身体の感覚を確かめながら、今の自分に丁度いい負荷をかけてポーズを練習していくと、単なる「気持ちいい」に留まらない爽快感というべき感覚が生まれます。
それは「あるべき位置に身体がある」というような、身体を使って整えた先にしか存在しないリラックス感です。
「ヨガ整体」と言われて…
ある時、体験に来られた方が、私のクラスを受けた後、「あれはヨガじゃないよね。ヨガ整体だよねー。」というのを小耳に挟んでしまい、その時はショックを受けました。
ところが今では案外それは的を射ているかも?と思うのです。
私のレッスンでは、「ポーズで動かしながら身体を整えていく」という要素が確かに多いのです。
それは何故かというと、身体のいろんな部分を使っていくことが、身体の可能性を広げることにつながるためです。
日常生活で、いつも同じ動作をしていると、いつも決まった部分の筋肉や関節しか使わない習慣が身についてしまいます。
すると、いつも使う部分しか発達していきません。
一方で、普段使わない筋肉など、身体のいろいろな部分を満遍なく使っていくと、身体の隅々までいろんな部分が発達していくのです。
身体には、それはそれは数え切れないほどの筋肉があり、その筋肉は神経、ひいては脳とつながっていますから、満遍なく身体を使うということは、当然脳のいろいろな分野も使うということです。
脳も全く同じ。
いつも決まった部分しか使わなければ、使われていない部分はどんどん退化していきます。
日常生活では、わたし達は、脳細胞のほんの一部分しか使っていません。
普段使えている部分は、脳全体からすると、氷山の一角だと言われることも。
ですので、身体の微細な部分にまで意識を向けて、しっかり丁寧に動かしていくのは、脳全体を活性化するためにも非常に役に立つのです。
脳全体が活性化されれば、当然、普段の感情や精神状態が健やかになり、ポジティブになり、考え方や物の見方も変わってくるということ。
身体を整えることは、心を整えることにつながるのです。
身体の癖はこころの癖
身体は心、心は身体であるという「心身一如」の考え方に基づくと、身体に無理な癖がついているということは、心の方にも同じように、無理な癖がついてしまっているとも考えられます。
例えば、つい、身体を捻ってしまう癖があるとすると、心の方にも、ネガティブ思考の癖があったりします。
他には、いわゆる完璧主義など過度の思い込み、細かいことが気になってモヤモヤする…など自分の心の癖で困っている場合は、日頃の身体の方の使い方に、自分の身体を自分で痛めてしまうような癖がないか否か、確かめてみてもいいかもしれません。
身体を整えていくことは、心を整えることにつながり、単にリラックスすることを超えて、心の健康に非常にプラスになることなのです。